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S邸リノベーション。22「解体!防水紙・GW・ビニールクロスの経年変化。」

ゆうです^^

現在S邸リノベーション工事が進んでいます。

夏前の話ですが、解体の様子を一部ご紹介。

22年経った防水紙やシーリング、グラスウール、ビニールクロスはどんな変化をしているのでしょうか。

エスネルデザインでは新築だけでなく中古住宅のリノベーションも勧めています。
それは『それぞれの家族に適した豊かな暮らしがある』から。
新築しか選択肢がないわけではありません。
「その家にいつまで住むのか」
「老後に移住する可能性」
「未来の住宅の価値はどうなるのか」
「希望するエリアにちょうど良い土地がない」
「今ある建物を有効に利用したいという想い」
など、新築より中古を選ぶ理由はたくさんあります。
S様には中古リノベーションと縁がありました。
網川原のエスネルのK様は新築を計画中です。

僕は現在、二世帯暮らしをしています。

「みんな違ってみんな良い。」

僕は『その方に合った豊かな暮らし』から具体的な住の形を提案したいと考えています。

外部の調査はしていたが、足場が掛かりより近くで確認が出来るようになった。

S邸リノベーション。08「インスペクション実行『外周り①』。」

雨があたり塗装が剥げた幕板。

外壁(窯業系サイディング)も傷みが激しい。
窯業系サイディングは10年おきなどに全面塗装が必要。
塗装しないと雨水がサイディング内に入り込みより傷みが増していく。
→イニシャルコストが低くてもメンテナンスコストがかかるため、エスネルデザインではお勧めしていない。

【秘訣】「おすすめ外壁は板張り。」35年間のメンテ・費用を考える。

切れたシーリング。

22年経った雨樋(樹脂製)は使用に問題はないが、色褪せは進んでいる。
(現在のものはより色褪せづらくなっていると思われるが)

解体が進む内部へ。

タイベック(防水紙)の劣化を調べるため、一部切り取ってもらった。

パッと見たところ、割けもなく健全そうに見える。
雨漏りの様子もない。

折ったり裂こうとしたり負荷をかけたが切れることはなかった。

師匠のブログによると、24~26年前にタイベックには「熱劣化安定剤」が加えられたそう。
そのお陰か22年経ったものでも劣化はほぼしていないように感じられた。

(それ以前のタイベックは熱による割けなどの劣化が起きることがある。

また、タイベック(デュポン社)以外の防水紙には「熱劣化安定剤」がどれほど付加されているかは不明。)

詳しくは師匠のブログを↓
外壁の防風透湿防水シートの寿命・・・20年!!

住宅は、最終的には防水紙で防水性が守られている。

エスネルデザインでは、防水紙だけでなく『付加断熱材』を構造材の外に施工する。
(非浸透性のボード系断熱材)
これは断熱性の向上だけではなく、防水性の向上も目的としているためです。

家の寿命は「雨漏りによる構造材の腐り」で決まることが多い。
防水は何重もの安全を考え、堅実に設計していきたい。
(軒の出ゼロや厳しいサッシ納まりなどはしない)

【秘訣】「タイル外壁ってどうなの?」35年後の張替えを想像する。

壁内に充填されていたグラスウール(断熱材)。
壁の外に通気層もなく、室内側に防湿層もなかったが「壁内結露→カビ発生」はしていなかった。
(一部黒い部分はカビではない)

22年経ったビニールクロス。
窓の周辺は一部はがれている部分もあった。

折ってみたが、弾性は(ある程度)保たれていた。

ビニールクロスの色の変化が分かる一枚。
(照明撤去後)

タバコを吸われていたであろう部屋の天井の色変化。
(シーリングライト撤去後)

その他…………….

2階天井撤去後。

 屋根下地の荒板に雨漏りの様子はなくひと安心。
(インスペクションで確認していたが)

S邸リノベーション。13「インスペクション実行『室内④小屋裏』。」

おまけ…………….

綺麗に整頓された撤去物たち。
こういう仕事をされる大工さんに家を建ててもらいたい。

僕は、新築だけでなくリノベーションにも精通した設計士でありたい。

それは、建材の経年変化への想像力を持っていたいから。

「この材は20年以上持つのか」

「メンテナンス費用があとからかかるのではないか」

「この納まりで防水性はどのくらいの年月問題ないのか」

「美観上はどうか。長く愛着のわく家となるか」

危ういと思えば、それを踏まえて安全性の高い設計を考え直す。

「危うい」と感じるためには、実際に20~30年と時間の経った建材に触れる必要がある。

「リノベーションの設計」は「新築の設計」へつながっていきます。

※僕が築35年以上の我が家に住み続けているのは
「築年数が経った建物に実際に住んで感じる」という理由もある。

…………….

S邸リノベーション工事、まだまだ続きます。
次回もお楽しみに^^

-「超高断熱の小さな家」escnel design-
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【秘訣】杉外壁の経年変化「前職の家の7年間の変化。」

ゆうです^^

前回の記事から杉板外壁について書いています。

前職場で建てた家の7年間の杉板外壁の表情の変化を紹介します。

無塗装の木の外壁(杉 赤白) 2年後

※前職場(オーブルデザインさん)のリンクを張ります。
 詳しくはリンク先の師匠のブログをご確認ください。
 (思慮深く科学的でとても参考になります。)

まずは、完成時と完成から1年経ったときの変化の様子。(2010年)

新潟の家から 自然素材の外壁とは・・・

新築時の「木色」からうっすらシルバーグレーに変化する様子が伺える。
最初は「板と板の間」にカビが生えることが分かる。
(水が溜まりやすいため)

築2年の様子。(2011年)

無塗装の木の外壁(杉 赤白) 2年後
シルバーグレーの外壁は「木の幹」と同じ色。

築3年の様子。(2012年)

天然素材の杉の外壁 無塗装で丸3年経過

綺麗なシルバーグレーの南西面と、カビが点在する南東面の差が分かる。

築4年の様子。(2013年)

超高断熱 木の家 が幸せを呼ぶ

植栽の緑とシルバーグレーの杉板外壁のコントラストがとても素敵。

築7年の様子。(2016年)

カビと薬剤?通風?

屋根の通気口まわりにはカビがあまり生えていないことに気づいた。

最後に、「木の外壁と植栽について」

「緑の家」の神髄は「時間(とき)」にあり・・・

緑があるから人も外壁も活かされるのかもしれません。

…………….

いかがでしたでしょうか^^

杉板外壁の経年変化は立地や周辺環境の違いによりケースバイケースです。

しかし

「○年後にはだいたいこんな感じになるのかー。」

「カビのムラ具合はこの程度なら許せるなー。」

などおよその目安が伝われば幸いです^^

…………………………………………

村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

前職での設計格言シリーズ。
:「コンピューターには出来ない仕事をする。」

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【秘訣】杉外壁のメリット・デメリット「メンテ・目地/腐朽・クギ浮き」

ゆうです^^

杉板外壁のメリット・デメリットをまとめたいと思います。

自然素材である杉板は時間と共に変化します。

その変化をどう捉えるか。弱点にどう対処しておくか。

設計者は経験や知識が必要ですし、
建て主様はデメリットを理解した上で判断することが求められます。

僕は、風合いやコストメリットから杉板外壁をお勧めしています。

【秘訣】「おすすめ外壁は板張り。」35年間のメンテ・費用を考える。

杉板外壁の良い点は大きくは、

・風合いが良いこと。


・経年変化を楽しめること。


・コストパフォーマンスが高いこと。

ですね。これらは以前からお伝えしていました。

※良い点と感じるかどうかは「好み」によります。

新築時の杉板外壁の様子。暖かく柔らかい表情。
『山取り樹木の庭と杉板の家』完成

経年変化で綺麗なシルバーグレーになった杉板外壁。
(無塗装。築2年半。南面)
【お客様の家】築2年半の杉板外壁の経年変化〈T様邸〉

今回はさらに細かい良い点をお伝えします^^

・造作がしやすいこと。

壁埋め込み型の造作ポスト。

木は大工さんが簡単に加工できる。
この「簡単に加工できる」ということは(見落としがちだが)メンテナンスを考える上でとても大きなメリットとなる。

同様に、

・部分的な張替えがしやすいこと。

万が一、外壁を一部張り替えなければならない場合、
板であれば簡単に張り替えることが出来る。
(クギを抜き、板を外し、新しい板を打つ。)

これが他の外壁だった場合、とても大変。(コスト大)

・なくならない素材であること。

上記のように外壁を張り替えなければならないとき、
外壁が工業製品の場合、
「廃番」になっているということが多々ある。

外壁材のデザインの移り変わりは激しい。
(特に窯業系サイディング)

自分の家の外壁が廃番になっている場合、
全面新しいものに張り替えるか、パッチワークになる可能性がある。

木は何千年も昔から不変の材料。
これは実はとても大きなメリット。

・目地が目立たないこと。

前提として伝えたいのが「木造住宅は動く」ということ。

柱の乾燥や在来軸組工法(ピン工法)の特性上、完成してからも軽微に動く。
(体感できないレベルで。)

そのため外壁に目地(動きを吸収するための隙間や弾性体)」が必要になる。
(それがないと動きに追随できずヒビ割れが起きる。)

実家の外壁(窯業系サイディング)の目地。
再塗装してからまだ10年経っていないのでそこまで目立たないが、
経年とともに汚れが付き目立ってくる。

目地が目立つと「張り合わせた感」が出てしまい少し格好悪い。
(住宅街をドライブすればそういう家がたくさん?)

杉板外壁は言わば「目地だらけ」。
これだと逆に目地が目立ちづらい。(意識されない。)

板の枚数だけ目地がある。
当たり前で自然なことのため気にならない。

・風景をつなげられること。

これはまだ少数派の価値観だと思うが、

「風景(歴史)を未来へつなぐ」

ことはその地域の風景を守ることにつながり、
家の価値を高めることにつながると考えている。
(というか、そういう社会を作りたい。)

世界を旅していた時、
フィレンツェの例えを出すまでもなく、昔からある家々の街並みはとても魅力的でした。

「住んでいる人の美意識」を感じました。

そして、僕は帰国して地元(柏崎の西山町)に戻った時、
それらの国々と同じような感動を味わいました。

杉板張りと瓦屋根の家々。

これぞ世界に誇れる日本の原風景だと。

これは大切な日本の価値、財産なんだと。

『外を知ることは内を知ること。』ということも強く感じました。

あるTV番組で、日本に来られた欧州人の大工さんが日本の窯業系サイディングの家を見て「日本の外壁はフェイク(偽物の材)で作られている。」と言っていたのが忘れられません。

日本人はここ数十年、経済発展を追いかける中で「合理性」に傾き過ぎたのかもしれません。

「本物の材は、施工が大変だし経年変化するからクレームがきやすい。」

「似た材を作って、安く楽でノークレームにしよう。」

今まではそれで良かったのかもしれません。

しかし今、少し考え直しても良い時代になってきているのではないかと感じています。

組石造のパリの田舎の家々(2012.8)。

また長くなってきてしまいました(^^;)

続いて、杉板外壁の悪い点(弱点)を。

(良い点より悪い点を知るほうが重要ですね!)

木の最大の弱点、それは

・腐ること!

我が家の車庫の隅。
【秘訣】板外壁の経年変化。「雨の跳ねを考慮する」

腐れば、木はなくなります。それは避けなければなりません。

「腐る=菌が木を分解する」ということ。

菌(腐朽菌)が木を分解するにはいくつかの条件が必要です。

「水分」「快適な温度」「酸素」「栄養」

の4つがそろったときに菌は木材を腐らせます。

温度・酸素・栄養は制御しがたいので、
木を腐らせないためには「水分」を制御します。

具体的には、

・水はけを良くする、水がかりを減らす。
 →木の表面を雨が流れやすくする張り方をする。
 →地面から板外壁を離すことで雨の跳ね返りを減らす。など

・通風を取り、乾燥させる。
 →外壁通気工法の採用。凸凹を減らし湿気の滞留を防ぐ。など。

(他には・腐りに強い樹種を選ぶ・防腐剤の塗布、などもある。
 長くなるので詳しくはまたいつか。)

対策さえきちんとすれば、
腐ることに対しては限りなくリスクを下げることが出来ます。

・カビが生える。

黒い部分は表面に生えたカビ(築5年、北東面)。
東面は雨がかりが少なく、カビが目立ちやすい。

築2年~10年くらいまではまだらに汚れ(カビ)が付いてくる。
(その後、シルバーグレーに落ち着いていく)

まずお伝えするのは、カビと腐朽菌は別物です。

腐朽菌は木を腐らせる悪いヤツですが、カビは悪さはしません。

カビの問題は美観上の問題です。

完全にシルバーグレーになるまでには長い年月がかかります。
(日や雨の当たり方などでケースバイケース)
(目安としては、西面:4年~、南面北面:6年~、東面:10年~。※超概算)

シルバーグレーになりきるまでの過渡期は
気にならない人は気になりませんが、
気になる人は気になると思います。

(僕は、カビの出始めに少し気にして3日後には気にならなくなるタイプ。)

これは個人の好みの問題ですね。

気になればデメリット、気にならなければデメリットではなくなります。

綺麗にシルバーグレー化した海カフェドナさんの外壁(築35年以上経過)。

・ヒビが入ることがある。

木なので、経年変化でヒビが入ることがあります。

大きなヒビでなければ特に大きな問題はありません。
(板の奥に施工する防水紙で防水を守っているため)

築35年超の杉板外壁。
割れが起きているのは赤丸部分のみのため、美観上も大きな問題ではないかと考える。

(この程度でもヒビが気になる方には杉板外壁はお勧め出来ない。)

・反りによるクギ浮きが起きることがある。

無垢の杉板はどんなに乾燥させても反り(そり)が起きます。
反り自体は特に問題はありません。

そして杉板は乾燥して縮みます。
縮むとクギの周囲が「すき」ます。
(隙間が出来るということ)

「大きな反り+すき」の影響で一部まれにクギが浮いてくることがあります。

クギが1本抜けても外壁が落ちることはありませんが、
なんとなく気になるかもしれません。

そんなときは、再度クギを打てば補修完了です。
(低い位置なら自分で。高い位置なら大工さんに頼んで)

また、あえて「錆びるクギ」を選ぶこともクギの抜け対策になります。
(鉄クギ、電気亜鉛メッキクギなど)
「錆びる=体積が増える」効果を生かし、クギの抜けを防ぐ方法です。

・節抜けすることがある。

抜けそうな「節」

板の乾燥により節が抜けることがあります。

抜ける節は、
「死節」(枯れた枝から出来る周囲と組織がつながっていない節)や、
「節埋め」(死節を取り、その穴に別の木を埋めて接着剤で留めた節)です。

が、これも美観上の問題です。

節が取れて気になるようであれば、取れた節を接着剤で留めるのもひとつです。

また、節が抜けづらいよう、死節や節埋めした材は極力使用しないという選択肢もあります。
(コストとの兼ね合い)

(ヒビ同様に、節の抜けも気になる方には杉板外壁はお勧め出来ない。)

…………….

以上、杉板外壁のメリット・デメリットでした。

もっと気になるようであれば、一度田舎の杉板外壁地域を歩いてみると新たな発見があるかもしれません^^

杉板外壁は外壁材の主流ではありませんが、メリットや魅力がとても大きい材料です。
(主流は窯業系サイディングや金属系)

弱点の対策をした上で、軽度のヒビなどは許容できる心持ちがあれば、
杉板はとてもお勧めの外壁材ですよ♪

…………………………………………

村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

前職での設計格言シリーズ。
:「日常体験の蓄積が最も大切。」

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【秘訣】杉外壁の経年変化「祖父の家の杉板と実験の経過」。

ゆうです^^

僕がお勧めする『杉板外壁』の経年変化シリーズです。

今回は、祖父の家(築37年)の杉板の様子をご報告。

今回もいろいろと面白い発見がありました^^

祖父の家は我が家と同じ柏崎市にあります。

僕の実家、我が家(相方の実家)、祖父(母方)の家とも柏崎市内にあり、祖母(父方)の家も上越市のため、帰省は何かと楽^^

コンパクトシティならぬコンパクトファミリー?

中越沖地震時などの有事の際は助け合ったものです。

こういった暮らしの選択も今後増えて来るのでしょう。

偏芯する大屋根がモダンな祖父の家。
手前の大谷石の塀は中越沖地震時に崩れ、昔よりも高さを減らして修復された。

玄関わき(東面)。縦張り、板幅は14cm。
赤丸の部分は玄関階段の水はねの影響で色落ちが他の部分よりも進んでいる。

外壁を塗装すると、数年置きに塗りなおさない限り色むらが出来てしまう。
それであれば、いっそ無塗装でどうかというのがエスネルデザインの提案。
(前職の所長の思想を参考にしている。)

板の留め付けは板一枚に付きクギ1本。
1箇所のみの留め付けとすることで、板が縮んだ際に板が割れづらい。
(板の木口を見ると材が縮んだ様子が見て取れる。)
2箇所留め付けだと材が縮めず経年変化で割れてしまうことがある。
(材の乾燥具合にもよるためケースバイケース。)

南面。 横張り。
南面は日射は多いが雨のあたりが少ないため外壁の色落ちは少ない。

横張りだと出隅の納まりがシビアになる。
見切り材なしで板同士の突き付けだとスッキリして良いが、反りにより多少板が離れてくる。(許容範囲)

北面は日射が少なく雨が満遍なく当たるためきれいにシルバーグレーになる。
37年経過の雨どいは叩けば割れそうだがなんとか持っている。
雨どいの交換時期は持っても30~35年ほどと思っていたほうが良い。

縦張りは水切れも良くきれいにシルバーグレーになる。
美観上も防水上も良い。
エスネルデザインでは杉板の縦張りを外壁の標準仕様としてお勧めしたいと考えている。

東面(左)と北面(右)。
方角によりこれだけ経年変化の表情が違う。
新潟は北西の風が多く北西面に雨が当たりやすい。

設計者は、自然素材を使う場合は雨や日射など自然の影響を熟知しておくことが求められる。

…………….

最後に、板の放置実験の中間結果報告を。

12月に開始した板の経年変化の実験。
左の二枚が国産の杉板、右が北米産のウエスタンレッドシダー。
天に向けて置くことで、雨や日射をより当てて劣化を促進させた。

板外壁の経年変化。「方位による風合いの違い」

実験開始から約3ヶ月が経ちました。

板たちはどう変化したのでしょうか?

全体的に色が脱色された板たち。
冬の3ヶ月だけなので時間も日射も雨も少なくまだ変化は少ない。

裏面。湿気がこもっていたのか「杉・白」のほうに多少カビが生えていた。
板には赤身(心材)と白身(辺材)があり赤身のほうが耐久性がある。
(白身は水分や栄養分や吸放湿性が高め)

赤身と白身の違い。白身を通って水分や養分が運ばれていく。
(画像は梅江製材所さんHPより)

レッドシダー。乾燥材(上)未乾燥材(下)

未乾燥材には「流れ節」があり、乾燥によりはく離しかけていた。

裏面はまだ新品時の色が残る。
カビも見当たらない。(レッドシダーは耐久性が高い。)

意外だったのが乾燥材の板のほうが反りが出ていたこと。
木表側に凹に沿っている。

未乾燥材は反りが少なかった。
反りは「乾燥具合」にもよるが「それぞれの板の性格」によっても異なる。

杉板も木表側に凹に沿っている。(どちらも乾燥材)

こうすると反りが分かりやすい。
反りは樹種や幅、留め付け方によっても変わってくるため経験のある設計者と施工者の判断により適切に留め付ける必要がある。

板などの自然素材は経験がないと扱いは難しいですが、上手に付き合えればこれほど魅力的な材料はありません^^

長期的なメンテナンス費も抑えることが出来ます。

【秘訣】「おすすめ外壁は板張り。」35年間のメンテ・費用を考える。

ただし、設計者が材がどのように経年変化をするのかを知っていることが必要です。

新築の現場だけでなく、築年数の経った家を観察することは、設計者に大きな知識と経験を与えてくれます^^

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村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

前職での設計格言シリーズ。
:「自分が納得できるまで調べる。」

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【秘訣】集成材やヒノキ床材の経年変化。

ゆうです^^

新しい机を準備している際に集成材の経年変化の様子をみつけることが出来ました。

また、先日訪れたお宅でヒノキの床材の経年変化も見ることが出来ました。

机の天板に使用している松の集成材の板。
日に当たっていた部分(左 )と日に当たっていなかった部分(右)

白木色からアメ色に変化した集成材(手前)。

針葉樹などの木材は、経年変化で色が徐々に『アメ色』に変わっていきます。

一般的な木材であれば、色が濃くなっていくと思ってもらえればだいたい合っています。

劣化や経年変化の原因は「酸素劣化」「熱劣化」「紫外線劣化」が主な原因に上げられます。

木材の色が変化する原因は「紫外線」による影響が大きいです。

木材に含まれるリグニンいう成分が紫外線を吸収する過程で木材の色が変化していきます。

人間の肌が日光を浴びて黒くなることと似ていますね^^

ちなみに木材の色が変化するのは木の表面から0.2mm程の深さまでです。

そのため、表面を削ると元の色が現れます。

また、オイルなどで表面保護塗装している場合、時間と共に塗料に含まれる成分が変化し見た目がより濃く見えるようになることがあります。

また、ウレタン塗装は紫外線を吸収すると黄色に変色しやすい傾向があります。

エスネルデザインでは「無塗装」で木を使うことをお勧めしています。
それは「肌ざわりが段違いに良いから。」

夏、汗ばんだ手足で触ってもサラッとして気持ちが良い。
(ウレタン塗装したものだと調湿作用がないためツっぱる)

続いて、ヒノキの床材の経年変化を紹介します。

5年が経過したヒノキの床材(無塗装)。
人間の皮脂によりオイルを塗らなくても自然と光沢が出てくる。

新築時のヒノキの床。白さと薄紅色があるまだあどけない色合い。

ヒノキの床材の変化はまるで人間の皮膚のよう。
赤ちゃんのような白・薄紅色から、大人のようなアメ色に変化していく。

自然素材はそれが良いところ。時間と共に深みと愛着が増していく。

材がやせて(乾燥により縮み) 板と板の間に多少隙間が出来てくる箇所もある。
自然素材では当然起こり得ること。選ぶ前に納得しておくことが大切。

柔らかいヒノキなどの針葉樹は引きずればキズも出来る。
新築時はだれしも過敏になりがち。だが2年も経てばほとんど気にしなくなる。

(新築計画時にキズを心配しすぎてウレタン塗装でコーティングすれば、肌ざわりなどの自然素材の魅力はほとんど失われてしまう。)

「柔らかい」とは「密度が低い」ということ。

「密度が低い」とは「中に空洞が多い」=「さわったときにヒンヤリしない」ということ。

ヒノキなどの針葉樹は、ナラなどの広葉樹に比べ裸足で立ったときにヒンヤリしづらい。

また、柔らかいため、長時間立っていても広葉樹に比べると疲れづらいように感じている。
(見学会など長時間立ちっぱなしの時の実体験より)

サラッとした肌ざわりと柔らかい感触がたまらないヒノキの床。
新築時からアメ色に変わる経年変化も楽しい。
突板フロアやビニールフロアではわからない愉しみ)

最近『工業製品とは違う家づくりの捉え方。』ということを考えます。

家は「工業製品」的な仕上がりを期待されることがあります。

住んでからもキズひとつついてはいけないような。

念願のマイホームであればそう思う気持ちは当然かもしれません。

しかし、それに囚われすぎてしまうとどんどん既製品やビニール建材、コーティングされた床材など、自然素材の魅力や大工さんの手仕事を感じることが出来ない家になっていってしまいます。

住まわれる方の好みにはよりますが、

「経年変化を受け入れる。」

「住みながら多少のキズがつくことは許容する。」

という心のゆとりがあれば、自然素材と仲良く付き合っていけるのかもしれません。

そして、時間と共に変化する自然素材の魅力を愉しむことが出来るでしょう。

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村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

前職での設計格言シリーズ。
:「理由を知って始めて知識になる。」

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【秘訣】杉外壁の経年変化「柏崎の海沿い探訪」。

ゆうです^^

先日、海沿いに建つ家々の杉板外壁の経年変化を確認してきました。

ドナの外壁や我が家の蔵の外壁も。

いろいろな発見がありました^^

「海カフェドナ」に行く道中、海岸線をドライブ^^

新潟観光大使。37『春の「海カフェドナ」とシャボン玉。』

柏崎の海沿いの家々は「観光資源」になると思う。
風雪に耐えて建つシルバーグレーの家々。

海風除けの塀も、サビづらく高くても軽いよう金属ではなく「木製」。

柏崎の海沿い(特に大崎~椎谷)はこういった家々が立ち並ぶ。
一見の価値ありです♪

おそらく張られて40年程は経過しているであろう杉板。
「節」のあたりから割れが始まっているのがわかる。
(節とその他部分で収縮率が異なるため)

柔らかい「春目」が減り、硬い「冬目」が残り年輪が浮き上がってくる。
(意図的にこうする技法は『うづくり』と呼ばれる。)

錆びる「鉄クギ」と錆びづらい「ステンレスクギ」
うづくりとなった板の陰影がとてもきれい。

海カフェドナの外壁(築35年以上経過)
上下の板を重ねて張る「下見板張り」は陰影が立ち建物の彫りが深くなる。

「数年経って元々少し残っていた塗装はほとんどなくなった。」
とオーナーの柘植さん。

ドナからの帰り道。
シルバーグレーの家だけでなく「塗装した家」もある。
ここらへんは住み手の「好み」。

しかし、板への塗装は数年ではげてくるため、「塗り直し」or「はげた風合いを受け入れる」ことが必要。
(これを計画前に理解して納得しておくことが重要!)

正面だけ塗り替えるという選択肢も。

「瓦屋根+杉板」の家。僕の感性ではとても凛々しく滋味深く見える。
歳相応に深みや風格の出る家。

「いつまでもきれいな(一部汚れが目立つ)家」とは全く別物の価値観。

椎谷の街並み。

屋根部分のみ張替え中の家があった。
杉板の新旧の対比が面白い。

日本三大馬市「椎谷の馬市蹟」 。
モルタル瓦も海沿いの風景に良く似合う。

車庫ですら凛々しく見える。
それは「海風に何年も耐えて建っていること」が伺えるから。

ダークカラーの塗装であれば、落ちてきても「自然で力強い風合い」と感じることも。

椎谷の夕日が丘公園。

新潟観光大使。33『出雲崎観光♪良寛堂・天領の里・夕日が丘公園。』 

椎谷の街並みを見下ろす。 海がこんなにも近い生活。

帰り道。

海沿いの塀にはカラフルなペイントのある家も。

目の前は海。

我が家のお向かいさんの家。

平入りで広い瓦屋根+杉板外壁。
雄大でとても格好良い。

我が家の車庫(築35年超)
北西面(右)は全然雨風が当たらないのか塗装が割りと残っている。

塗装はもう10年以上塗っていない。
しかし35年過ぎた今でも板は健全。

やはり節のあるところから割れが起きている箇所も見受けられた。

(板の裏の防水紙が生きていれば問題ない。)
板にはたくさん節があるが、割れていたのは赤丸の部分のみ。
35年経過でこの程度ならそこまで節を気にすることはない。

我が家の蔵。板を張って塗装を塗って10年弱。
塗装は防腐塗装の「クレオトップ」

正面は北東面。塗装の残は半分ほど。
(しかし色が馴染んでいるのでそれほど違和感はない。)

北西面(左)と南西面(右)。
日射の当たる南面から板が白く退色してくる。

南西面(左)と南東面(右)は同等の退色具合。

板の端部を見ると、外側に反っているのが分かる(問題なし)。
雨切れなど考慮し「木表」を外に向けて貼っている。

雨や日射が当たりづらい北東面の入り隅はまだ塗装が残っている。

後日。

知人の家の板外壁の塗装が剥げているのを見かけた。

板の塗料は大きく分けて2種類ある。
『浸透系』『塗膜系』 
今までの写真の家はほぼ浸透系。この写真の家は塗膜系。

浸透系は板に浸透するため剥げ落ちることはないが、ムラになるように落ちる。

塗膜系は板に浸透するわけではないので、ムラのようになることはないが、板の伸縮についづい出来なくなるとベリっと剥げ落ちてしまう。

(どちらにもメリット・デメリットがあるので選定には知識と経験がいる。)

「風合いが良いから。」

と簡単に板外壁を選択すると、住んでから

「こんなはずじゃなかった!」

と後悔する可能性があります。

自然素材は経年変化するもの。

経年変化の様子やメンテナンスの必要性などを理解・納得した上で素材を選定することが重要になります。

〈その他の外壁シリーズの記事はこちら〉

【秘訣】「おすすめ外壁は板張り。」35年間のメンテ・費用を考える。

【秘訣】「タイル外壁ってどうなの?」35年後の張替えを想像する。

…………………………………………

村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

お勧めの外壁:杉板の無塗装。(好みによる)

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【秘訣】「おすすめ外壁は板張り。」35年間のメンテ・費用を考える。

ゆうです^^

前回、「タイル外壁ってどうなの?」という記事を書きました。

僕は、タイル外壁は


「メンテナンスのしづらさ」「張り替え時の多大なコスト」があるためお勧めしていない

という話でした。(イニシャルコストもかかる)

ではどんな外壁がいいのでしょうか。


僕は「木の板張り」の外壁をお勧めしています。(好みによる。)

理由は、

・風合いがとても良いこと。経年変化を楽しめること。

・国産の杉板であればそこまで高くないこと。
 (一般の外壁材と同等のコストで済む。)

などありますが、

なにより、

・35年間メンテナンスなしで行けること。


・35年後の張り替え時に張替えコストが低いこと。

が最大のお勧めの理由です。

築2年半の杉板外壁(無塗装・ノーメンテ、南面)。
すでに綺麗なシルバーグレーになっている。

【35年間メンテナンスなしで行けること。】

前回「生涯ノーメンテで済むものはない。」と書きました。

ごっちゃにならないように説明したいのですが、

・材料単体で考えればノーメンテで行けるものはある。
 ex.タイル、木、その他の材も美観が許せれば材としては持つ。

・「ノーメンテで済まない」と言ったのは「防水」等の修繕のこと。

法隆寺の例を出すまでもなく、適切な管理が出来ていれば木材は何百年も持ちます。

(適切な管理・・・乾燥状態を保つこと=腐らせないこと)

そして、なにより僕らは経験上

「木は変化するもの」

という認識があります。

そのため、木が多少汚れていてもそれを「きたない」とは思いづらいのです。

皆さんも、外壁(窯業系サイディング)が汚れている家を見ることがあると思います。

あれは、きれいな外壁に一部汚れが付くから目立つんです。
(サッシ下の雨だれなど)

反面、木の外壁も当然汚れますが、その汚れを享受できるふところの広さを持っていると僕は思っています。
(好みによります。)

築2年~10年くらいまではまだらに汚れ(カビ)が付いてくる。

しかし、その先になれば板はシルバーグレーに落ち着く。
それは、柏崎や出雲崎などの海岸線沿いの建物をみれば分かる。

海カフェドナさんの外壁(築35年以上経過)。

35年以上経過した我が家の外壁。
厚みもありまだまだ健在。
(塗装していたため雨の当たり具合の違いで色むらが出来ている。)

【秘訣】板外壁の経年変化。「方位による風合いの違い」

ちなみに、35年間のメンテナンスコストを他の外壁と比べると、
(面積30坪程の家だとして)

・・・        0円(無塗装そのまま)
タイル・・・   0~50万円(15年で目地点検・補修)
金属・・・    約100万円(20年で一度塗り替え)
窯業系サイディング・・・約200万円(10年・20年で塗り替え)

※ケースバイケース、僕の想像。
※タイル、金属がノーメンテでも行けるかもしれないこと対して、窯業形サイディングは塗装必須。
(外壁材自体の防水性がなくなり水が染みこみ、凍害を起こしてしまうため。また美観上も耐え難くなってくる。)

築15年ほどで再塗装した僕の実家の外壁(窯業系サイディング)。
劣化と汚れと地震でのヒビ割れがあり塗り直した。(約100万弱)
※サイディングはレンガ調など多色なものもあるが、塗り直し後は単色になってしまうことにも注意。

※35年間のトータルコスト(イニシャルコスト+メンテナンスコスト)を比較すると、
      〈イニシャル〉〈メンテ〉
木(節有)・・・ 150万  +  0円  =150万
タイル・・・   300万  +0~50万円 =300~350万
金属・・・    150万  + 100万円 =250万
窯業系サイディング・・・150万  + 200万円 =350万

概算ですが、いずれにせよ
木の外壁は他の外壁よりもトータルコストを圧縮することが出来ます。

続いて。

【35年後の張り替え時に張替えコストが低いこと。】

前回の記事にも書きましたが、

築35年後までには防水紙が劣化するため、防水紙を張り替える必要が出てきます。

防水紙を張り替えるためには、外壁を撤去しなければなりません。

その際に、木の板は、

撤去費用、処分費用などが他の外壁に比べてとても安く済む

というメリットがあります。

これは35年後の老後生活が始まるときにとてもありがたいことだと思います。

僕は設計者として、
35年後、70年後を想定して、メンテナンスの手間やコストを加味した上で外壁の提案を行っていきたいと思っています。

※付き合いのある解体業者さんの話では、
「木・金属外壁の撤去費用」に対して
「窯業系サイディング・タイル外壁の撤去費用」はおよそかかるそうです。
(撤去手間+処分費)

35年後はさらに廃棄費用は上がっている?
いずれにせよ「単純」なものが一番融通が利くと感じています。

…………………………..

ドライにお金や手間の話をしてきましたが、

(僕の好みですが)もちろん木の外壁はその風合いもとても素敵です^^

街のなかに「木の外壁の家+植栽」があると見ていてホッとします。

新潟市の「ランプリール」は僕の大好きなカフェ。
緑と建物が融合していてとても心地が良い。
デザインルームアマノさん設計)

シルバーグレーになった木もいいけど、新築してすぐの木色もとてもいい。
『山取り樹木の庭と杉板の家』

ただ板を張ればいいわけではなく、クギの選定や板の張り方には工夫がいる。
木の経年変化を知っている設計者でないと自然素材は使いこなせない。

板は横張りだけでなく、縦張りすることも出来る。
雨の流れを考えてそれぞれに適切な納め方を計画する。

壁埋め造作ポストを作ることも木であれば簡単。
シンプルに必要以上に目立たないポストを提案できる。

いかがでしたでしょうか^^

外壁は好みもありますが、
手間やメンテコストが低く、風合いの良いものを選ばれれば良いのではないかと考えています。

…………………………………………

村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

お気に入りの靴
:栃木レザーの革靴(テカテカ防水加工なし)
 (相方からの誕生日プレゼント)

【関連記事】…………….

【お客様の家】築2年半の杉板外壁の経年変化〈T様邸〉

【秘訣】杉外壁の良い点・悪い点「メンテ・目地/腐朽・クギ浮き」

【秘訣】杉外壁経年変化実験まとめ①「見た目の変化」。

【秘訣】杉外壁経年変化実験まとめ②「中身の変化」。

【秘訣】板外壁の経年変化。「雨の跳ねを考慮する」

【秘訣】板外壁の経年変化。「方位による風合いの違い」

【秘訣】杉外壁の経年変化「柏崎の海沿い探訪」。

【秘訣】「タイル外壁ってどうなの?」35年後の張替えを想像する。
【秘訣】窯業系サイディングは勧めません!「劣化とメンテコスト」

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【秘訣】「タイル外壁ってどうなの?」35年後の張替えを想像する。

ゆうです。

【家づくり金言】

「生涯ノーメンテで済むものはない。」

ということを理解して家づくりを進めること。

外壁材や屋根材を決める際に、これがとても大きなポイントになります。

先日、友人から

タイルの外壁ってどうなの?」

「営業マンが一生メンテナンスが要らないって言ってたんだけどホント?」

という話を受けました。

この手の話はよく聞きますが、ハッキリ言います。

生涯ノーメンテで済むものはありません。

営業マンが巧みなのは「タイル」自体は一生メンテナンス不要なのでウソはついていないこと。
(タイルは1200度程の高温で作られるためほとんど経年劣化しない。)

タイルはノーメンテですが、「タイル外壁」はメンテナンスが必要です。

そして、僕は

タイル外壁はお勧めしていません。

家は30~35年後にはメンテナンスが必要になります。

豊かな暮らしのつくり方。14 ー『新築30年後にかかる費用。』ー

この一番の理由は、

外壁の奥の防水紙が劣化するからです。

35年後に防水紙のメンテナンスをしてあげないと雨漏りリスクが高まり、柱や土台などの構造材が腐る、シロアリに食われるリスクが高まってしまうということ。

防水紙とは、こういうものです。

最大手デュポン社の「タイベック」。20年保証が付いている。

外壁の中身。(住宅保証機構-設計施工基準より。一部加筆)
モルタル部分にタイルが張られる。透湿防水シートが防水紙のこと。
外壁の隙間から入ってきた雨水も防水紙が防ぐ。
防水紙は防水の最後の要となっている。

外壁材のタイルは劣化せずともタイルとタイルの間の目地は劣化します。(ヒビが入る)

タイルの目地にヒビが入り、その下の防水紙が劣化し穴が開けば、雨は壁内に入ってきます。

住宅の営業マンは新築提案時には35年後の話はほとんどしません。

したとしても、

「この外壁は汚れが付きづらい○○コーティングがされているので基本的にメンテナンスは不要(少ない)ですよー。」

と言ったくらいです。

本当に重要なのは雨から柱などを守っている防水紙なのですが、

防水紙になにを使っているかの説明はほとんどありません。

防水紙にもグレードがあり耐久性が違います。

本当は外壁のグレードよりも防水紙のグレードを上げたほうが家が長持ちする可能性は上がると思います。

しかし、おそらくメーカーのセールス戦略としては、

「雨漏り」よりも「美観・豪華さ」を売りにするほうがセールス的に効果があるということなんでしょう。

よくある「窯業系サイディング」という外壁は10年もすれば汚れてきます。

一方タイル外壁は見た目はわりときれいなままです。

一見すれば

「窯業系サイディングじゃなくてタイル外壁にすればよかったー。」

と思うかもしれません。

メーカーの営業戦略はそれはそれでいいと思います。

「美観や豪華さがあったほうが家は素敵だ。」と考えるのも理解できます。

しかし、ここにはひとつ盲点があります。

それは、

35年後の防水紙の張替え時にかかるメンテナンス費用についてです。

どういうことかというと、

タイル外壁にしてノーメンテで美観が良く35年過ごせたとします。

しかし、現在の防水紙の寿命は20年~30年ほどです。

これは時間が経てば替えなければなりません。

そして、防水紙を張り替えるには外壁を撤去しなければなりません。

そのときに「タイル外壁」だと多額の費用がかかります。

撤去費用、処分費用、新規張替え費用、、、

35年後に大きなコスト負担になります。

現実的にはきっと多くのタイル外壁の家が、

35年後も防水紙は替えずに、タイルの目地の補修をする程度でお茶を濁しているのでしょう。

しかし、ハッキリ言ってタイル目地のヒビを全てみつけて完全に補修することはほぼ不可能です。

だからこそ、最後の防水の要となっている防水紙が重要なんです。

100歩譲って、35年後も防水紙の張替えはせずに、タイル目地の補修だけで済ますとしましょう。

しかし、35年後にはサッシの交換があります。

サッシはタイル外壁の奥に留められているため、サッシを交換するためにはサッシまわりの外壁を剥がさないといけません。

いずれにせよお金がかかるという話です。

サッシ交換にせよ、雨漏りにせよ35年後に一気にやり直す場合はまだいいかもしれません。

しかしこれが15~20年のうちに起きたら、、、

タイル外壁は、時間が経ってもきれいで豪華ですが、

その裏には

メンテナンスのしづらさ

張り替え時の多大なコスト

がある。

「35年後のメンテナンスを想像して外壁材を選ぶ。」

ことが良い家づくりの秘訣ですという話でした。

では、外壁はなにがいいのか。

長くなってきたのでそれはまた次回に^^

おまけ…………….
(住宅保証機構-設計施工基準より。)

全体の事故のうち壁からの雨漏りは7割以上!
いかに外壁の防水が重要かがわかる。

…………………………………………

村松 悠一(ゆう)
エスネルデザイン代表(設計士)

マイカップ:マリメッコ(ウニッコ:赤)

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【秘訣】板外壁の経年変化。「方位による風合いの違い」

ゆうです。

板外壁の経年変化。「雨の跳ねを考慮する」の続きです。

板外壁は、方位により経年変化に違いが出てきます。

なぜなんでしょうか??

左面(東)と右面(北)で外壁の風合いが異なる築35年の車庫。

方位によって風合いが異なる理由を少し想像してみてください。

(こういう何気ない「気づき」が日常をより豊かにする。)

この車庫は何度が塗装はしていますが、前周一様にしています。

それでも、方位によって風合いが異なってくる。

それは、主に

日射の影響です。

日射(紫外線)により木の成分に分解が起こり、雨が板の表面を洗い流し、
さらに、板に小さなカビが生え初めることで見た目がシルバーグレーになっていくんです。

人間に例えて言えば、

紫外線を浴びて肌が荒れて、
水で流されることで皮脂が流され、常にノーガード状態で痛んでいく。

といったところでしょうか。

ポイントは、表面に栄養や色素がなくなると、きれいなシルバーグレーになって変化が終わるというところ。

板の繊維質はそのままで数十年維持されるということ。

写真はサトウ工務店さんブログより。(退色を見据えた塗装のポイントも書いてあります。)

「日射(紫外線)によるダメージのほうが退色に影響するのかな。」と思ったこともありましたが、そうではなく、雨による影響のほうが大きいです。

紫外線だけなら、杉などの針葉樹系の板はアメ色に変化していきます。
(色が濃くなっていく)

アメ色に変化したヒノキ(無塗装)の床。(変化前はもっと白い)
写真はオーブルデザインブログより。(←本文おすすめ)

なので、シルバーグレーに変化する理由の大部分は、

雨による表面色素を洗い落とす効果と、カビによるものなんですね。

退色とカビがうっすら生えた板外壁。
板と板の間に、元々の木色が残る。

ここまでくれば、方位による風合いの違いの理由がわかりましたね。

簡単に言えば、雨の当たる量(風向き)によって風合いが変わってくるということです。

新潟では北西からの風が多く、北西側の外壁に雨が多く当たります。

そのため、北西側の外壁は色素がまんべんなくあらい流され、一面きれいなシルバーグレー色の外壁になっていることが多いです。

逆に南面や東面は、雨がまばらに当たるため退色はまばらになっていることもあります。

(いずれにせよ経年変化が進んでいけば同じようにシルバーグレーになっていく。)

シルバーグレーに退色された北面(左)と、塗装が残っている西面(右)。
西面の前には雨よけの木が茂っていて雨の当たりが抑えられた結果、塗装が落ちず残っていると考えられる。

板の留め付けは「鉄クギ」。
あえて錆びさせることで板と密着し、長期的に板を固定させる。
(サビ汁跡がつくので好みにもよる)

年数が経ち「うづくり」(年輪の凹凸が出た状態)となった板外壁。
塗装の落ちムラも味となり、風合いに付与する。

ちなみに、カビはどの方位から生え始めるでしょうか。

「日光に当たる南のほうが、なんとなくカビをやっつける効果があって遅いのかなー。」

「日当たりが悪い北面から生え出すんじゃないー?」

と思いませんか?

これ、真逆なんです。

カビは南面から生え始めます。

これは、南面が他の面に比べて日射(紫外線)を受けるため、板の劣化(板自体がもともと持っている防カビ成分の破壊)が進みやすいからです。

(このあたりはオーブルデザインのブログが詳しい。)

「板」一枚とっても、住宅に採用する際に様々な検討をします。

自然素材は近年流行していますが、使用する際には、経年変化・劣化を考慮して、未然に軽減できるよう設計する必要があります。

おまけ…………….

我が家には板外壁の「蔵」もあります。

ほどよく退色が進んだ我が家の蔵。(北面)

板壁と黒瓦の田舎の家(特に日本海側)の外観。これが街並みの風景をつくる。

蔵や家の西側には屋敷森がある。
先祖が植えてくれた杉林により、冬の北風や夏の西日が軽減される。感謝。

おまけのおまけ…………….

現在、板の経年変化を実験中。

左の二枚が国産の杉板、右が北米産のウエスタンレッドシダー。

天に向けて置くことで、雨や日射をより当てて劣化を促進させている。

どうなることか。

何事も「興味」と「実験」と「考察」から。

特に住宅のような様々な要素が絡み合うものには複合的な知識と判断が必要になる。

田舎暮らしはそのための経験づくりがたくさん♪

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【秘訣】板外壁の経年変化。「雨の跳ねを考慮する」

ゆうです。
最近、板を外壁に張る住宅が増えてきています。
『経年変化を愉しむ。』『日本の風景を伝える。』
僕はこの感覚がとても好きで、板壁の家をお勧めしています。
しかし、板壁を採用する際にはある注意点があるんです。

我が家の車庫兼作業小屋。築35年。
時間が経った建物は、新築住宅に使用する材料を考える上で最高の先生となる。
この日は青空も少し見え、気持ち良い日和だった。
茂っていた緑の道もすっかり冬の姿に変わりました。
干していた大根はすっかり脱水され小さくなった。
こういう風景を子供に見せてあげたい。 
そろそろこいつの出番が近い。毎年お世話になってます。

さてさて、板外壁の件ですが、、、
この写真を見て、板外壁を使う際の注意点がわかるでしょうか。
こうすればどうでしょう。(赤線を引きました。)
そうです。
『雨水がはねる。』ことを考慮しておくということです。
上の写真の左側の板は雨水がはねる範囲内にあり、他の部分よりも劣化が進んでいます。
ドアの横あたりの板をさわってみるとうっすら湿っている。
水分があるということは、腐朽しやすいということ。
実際に、ドアの横の木枠の下の部分は腐朽してなくなっている。
それでもドア横の板が腐朽しきっていないのには理由があります。
それは、水切れが良いよう考えられているということ。
具体的には、
板が薄く、濡れても乾きやすい(厚9mm程)
・板の張り方を段々に張ることで水が切れやすい(南京下見張り)

新潟の田舎では(全国的にも)この外壁の張り方が一般的で、それが田舎の風景をつくっています。
この張り方は、雨の多い日本で何百年以上もの経験から導かれたものなんですよね。

ただのデザインじゃないんです。機能がちゃんとあるんです。

(僕は、日本のこの板外壁と黒瓦の風景はフィレンツェにだって負けないと思っています。)
さてさて、ではどれくらいの高さまで雨水ははねるのでしょうか。

よく見ると、雨の当たっている部分に、濃い部分と薄い部分の二段階があるのがわかる。

およそ、濃い部分の高さは50cm程、薄い部分の高さは60cm程でした。
(この車庫に雨どいはついていないため、雨どいがついている一般住宅よりも雨はねの影響は大きい。)
板の外壁を使用する場合は、板の経年劣化を抑えるためにもできれば地面から60cm前後は離しておきたいですね。
(他の対策としては、雨が跳ねる地面部分を砂利や植栽にして雨はねを軽減させるという方法もある。または軒を深く出す。)

雨の日の様子。

…………….
最近、板外壁の住宅が増えてきましたが、こういったところまで考えられていますでしょうか。
「新築時が一番きれいでどんどん汚れや劣化が進んでいく、、、」
といったことがないよう、20~30年以上の時間の経過・材の変化を考慮して複合的な設計提案がしたいものです。

板の外壁は雨はねによる劣化を防ぐことができれば、耐久性もとても優秀で写真の小屋のように30年以上そのままで持つことができます。

無塗装であっても同様です。ポイントは水気をすぐに切ること

上手に設計してあげれば、サイディングなどのほかの外壁よりも、

・メンテナンス費がかからず、
 (塗りなおしせずとも持つ)

・イニシャルコストもそこまで高くなく、
 (材によりピンきりあるが国産の杉なら高くはない)

・雰囲気は良い
 (経年変化、エイジング)

という最高に魅力的な外壁材になります。

もちろん好みによりますが、板外壁、僕はとてもお勧めです。